つぶやきより少しだけ長い何か。

忘れたくない感覚の記録

新神戸。

今まで何も意識せずに通り過ぎていた場所が、ある日突然、自分にとって特別な意味を持つ場所になることがある。

 

例えば、自分にとっては新大阪駅がそうだ。一回目の転職のとき、最終面接を受けた翌日、たまたま他の用で新大阪に向かっていた新幹線の中で、内定の連絡を受けた。その足でそのまま、新大阪の真正面にある会社のビルまで、オファーの説明を聞きに行った。それまでただの通過点でしかなかった駅が、人生の転機の場所となってしまった。

 

奥さんと再婚したときには、今度は新神戸駅がそのような場所になった。なぜなら遠距離恋愛をしていた私たちが、コロナ禍で何度も延期を余儀なくされたのち、ようやく初対面を果たした場所が新神戸駅だったからだ。その後も一緒に暮らすまで、自宅と新神戸駅の間は何度も往復して、新神戸はすっかりわが家にとって馴染みの場所となった。

 

ところで、新神戸の駅というのは、新幹線の駅の中でもかなり変わった場所にあると言える。山の斜面を切り開いて作られた駅なので、駅を降りて目を上げた先にあるのはまず、山である。神戸に都会的なイメージをもって初めて訪れた方は、まずこの段階で面食らうと思う。

 

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駅を出て、街と反対方向に向かって歩くと、布引の滝へ向かう山道に出る。五分も歩くと辺りは、少し前まで駅の雑踏にいたとは思えないような風景に様変わりする。

 

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やや急なところもあるけど、スニーカーであればじゅうぶん歩ける道を、さらに十分ほど行くと、布引の滝(雄滝)にたどり着く。雄滝は高さが40mほどもある立派な滝で、滝の水しぶきが展望エリアのすぐ近くまで飛んでくる。

 

十五分歩けば滝に出られる駅というのは、新幹線の駅どころか在来線の駅でもちょっと珍しいのではないか(箕面の大滝ですら駅から一時間はかかる)。旅の寄り道にも、駅での時間つぶしにもちょうどよい距離感にあるので、時間があれば荷物をロッカーに預けて立ち寄ってみるのもいいかもしれない。

 

もう少し観光地っぽい雰囲気を味わいたいなら、同じく駅から歩いてすぐのところにある乗り場から、布引ロープウェイに乗って、ハーブ園まで足を伸ばしてみるのもいい。

 

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さっきは眼前にあった滝を眼下に見下ろしたり、山の間から見える神戸の街のパノラマを楽しみながらロープウェイを上っていくと、ドイツ風のお洒落な建物と、ハーブや四季折々の植物できれいに整備された庭園が現れる。

 

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山頂駅でビールとソーセージを買って、テラス席でいただいたり、一通り園内を歩いた後、園内の所々に配されたハンモックやリラックスチェアに腰掛けて、のんびりした時間を過ごすのが、ここでのお気に入りの過ごし方だ。

 

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新神戸の駅は、都会的でお洒落なイメージの神戸の街の玄関口としては、作りの古さが否めないが、近年中に駅前の広場がリニューアルされる計画があるらしい。

 

私たちのよき思い出の場所の雰囲気が様変わりしてしまうのは少し寂しいけど、せっかくなら、遠方からはるばる神戸に辿り着いたときに、「おっ!」と今よりももっとテンションが上がるようなイメージチェンジを期待したい。